日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンター 第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)バルセロナ大会でポスター2件を発表
12.09.2023 - Science Technology
世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本における研究開発部門である日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンター(所在地:神奈川県川崎市、所長:アミット・ジャヤズワル)は、2023年9月4-7日にスペインで開かれた「第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)バルセロナ大会」にメイクアップおよびスキンケア製品の新規技術に関するポスター2件を発表しました。
IFSCC (The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists) は世界各国の化粧品技術者や研究者を対象にした国際機関であり、その学術大会は最新の化粧品研究成果の発表および討論の場となっています。本年は「美容科学を再考する(Rethinking Beauty Science)」というテーマの下に、76件の口頭発表と373件のポスター発表が行われました。日本ロレアルのリサーチ&イノベーションからは、カラーサイエンス研究所所属の堀 星子(ほり ほしこ)研究員らによる「北アジアの消費者のまぶたを立体的に見せる単色アイシャドウの新技術」とスキンケア応用領域研究所所属の菅 友美(すが ともみ)研究員らによる「特異な構造を示す新規ポリイオンコンプレックス技術を用いた化粧品処方」、以上2件の研究がポスターによって発表されました。
<発表内容のご紹介>
「北アジアの消費者のまぶたを立体的に見せる単色アイシャドウの新技術」
発表者:
堀 星子、一階 文良、山本 枝摩、横山 恵美理、林 玲奈、ジャスパース アレクサンダー
発表内容:
北アジアの消費者に好まれる「3Dルック」と呼ばれる、大きく自然な彫りの深い目元をメイクアップで実現すために、従来のアイシャドウでは、複数の色と重ね付けのテクニックが必要でした。今回、自動車の塗装技術からヒントを得て「3Dルック」を実現する主な要素を検討し、ハイライト効果を示す高反射フレークとシャドー効果を示す低反射フレークを組み合わせ、明るさのコントラストと自然なグラデーションをシームレスに実現するためのフロップインデックス(角度による色調変化率を表す指標)および粒子径によるスクリーニングによって、単色でも簡単に「3Dルック」を実現することができるアイシャドウを開発しました。また、この研究過程において実際のまぶた上で「3Dルック」を評価する方法も開発しました。
開発された単色のアイシャドウは、まぶたの上での「立体感」を標ぼうするこれまでの単色アイシャドウや多色のアイシャドウよりも、はっきりとした「3Dルック」を示すことが示されました。この技術はシュウ ウエムラのアイシャドウに応用されています。
「特異な構造を示す新規ポリイオンコンプレックス技術を用いた化粧品処方」
発表者:
菅 友美、五十島 健史、河西 毅彦、ジラン フラビー、ティライ ディーパ、ソン ユエンユエン、ワン ダン、浅沼 秀彦、小池 徹
発表内容:
化粧品に用いられているフィラーは軽い質感やテカリ防止など、特定の効果を発揮します。サンスクリーン処方でフレッシュな感触と高いSPFを両立させるため、油の中に水が分散する構造を採用しました。ほとんどの場合、環境に優しい天然/バイオベースのフィラーは親水性で、油相に分散しにくいので、IFSCC 2021で報告されたPGP (Polyion complex Gel Particles) 技術を応用した新しいポリイオンコンプレックス製剤(疎水化PGP)は、その特異な3Dネットワーク構造によって、親水性フィラーを油相に効果的に分散させ、フィラーの性能を十分に発揮させることができました。
この技術を用いた化粧品処方は、塗布後の皮膚表面に生成される微細な凹凸が汗や皮脂にさらされることでさらに増大し、光の乱反射が増加することにより長時間マットな外観を保ちます。また、従来の処方よりもフィラーの分散性が向上したため、SPFが向上するなど製品の性能を高めることができました。さらに、この処方の油っぽくなくべたつかない感触と軽いテクスチャーは、消費者に高く評価されました。
ロレアル リサーチ&イノベーションは「世界を突き動かすような美」を創造するために、全世界4,000人の技術者によって開発された技術を、ロレアルブランドの様々な製品に応用していきます。